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2006年02月28日

プロスポーツークラブのProfit MaximiserとUtility Maximiser

一般企業の目的とは利益を上げる事。では企業としてのサッカーチームは何を目的に運営されているのか。プロクラブの場合、その目的を大きく二つに分けることが出来る。利益を目的にするチーム(Profit-maximising)と、試合に勝つ事を目的にするチーム(Utility-maximising)。

一般企業とは違い、サッカーチームは利益を上げてるだけで試合に勝てなかったら駄目だ(というか、面白くない)。やっぱりスポーツであるからには、試合に勝つ事が大事になる。いつだってどこだって、プレーする方も観る側も試合に勝つ事を一番に考えているのだから。その辺りはプロだろうが、アマチュアだろうが関係無い。

昔から良く言われているのが、アメリカのスポーツリーグに属するプロチームは利益を目的にするProfit-maximiserで、ヨーロッパ、主にサッカーチームは試合に勝つ事を第一優先にするUtility-maximiserであるということ。

前者は、利益を最優先に考え運営されるのに対し、後者は例えば、収入が入った分だけ試合に勝つために全て費やす、というような運営の仕方。つまり利益ゼロ。これが昔からのヨーロッパのサッカーチームモデル。

この二つの目的にはそれぞれ良い部分、悪い部分があり、これまでに様々な影響をもたらしてきた。

昨日も書いたけど、アメリカのスポーツリーグモデルはとても閉鎖的で、独占禁止法に違反するような厳しい規制が、労働市場や収入分配において存在している。

これらは全て、チーム間の力の差を無くす為、試合を面白くする為、リーグ運営の為に取り入れられている制度だ。ヨーロッパのリーグも同じで、昇格降格のシステムや収入分配はチーム間の力の差を無くす為、リーグを魅力的にする為に取り入れられている。

つまり、チーム個人では商品を産出する事が不可能なスポーツリーグは、企業カルテル的な部分がある。

でも、利益を最優先にしていると言われるアメリカのチーム、試合を面白くするそれらの制度はチームの「試合に勝つ」やる気(インセンティブ)を減らしてしまう恐れがあるのだと言う。試合に勝っても負けても、同じように収入があり、どれだけ成績が悪くても降格する事はない。それどころかドラフトシステムは、下位クラブに「負ける気」を逆に出させてしまう可能性すらある。

面白くさせる為に取り入れられている制度だけど、そんなリーグが果たして面白いリーグと言えるのでしょうか。

一方、試合に勝つ事を第一優先にするヨーロッパ型のチーム(Utility-maximiser)。試合に勝つためには、良い選手が必要だ。良い選手を得るためにはお金が必要。良い選手には高い給料が払われるのだから。

イングランドのサッカーを例にしてみるが、クラブは試合に勝つため、良い選手を得る為にその収入の大半を選手の給料に費やしてきた。利益は殆ど無いか、ゼロ、それかマイナス。100年以上の歴史の中で、そうやって運営されてきたイングランドのサッカークラブ。

一時は選手の契約が切れても、移籍先のクラブからの移籍金が無い限り、所属クラブは選手を保持する事が出来たけど、一度それが廃止され労働の流動性が高まると、アメリカのような労働市場に制限の無いイングランドのUtility-maximiserの中では選手の取り合いがより自由になり、活性化する。

皆、利益そっちのけで勝つ事が目的なので、選手の需要がどんどん上がる。そうなると今度は、選手の需要が供給を上回りインフレ状態になって選手の移籍金、給料がどんどん上がってしまうようになる。そうすると、選手の給料がクラブ収入の殆どを占めるようになり、もうどこのクラブもイッパイイッパイになってしまった。

そんな時に起こった出来事が二つ。テレビという新しい、しかも莫大な収入源。そしてもう一つが、ヨーロッパ連合圏内の選手の移籍の自由化(俗に言うボスマン判決)。それまでイングランド国内では、外国人選手の数に制限があり、国内選手の値段は異常な値段だったようだ。

その出来事のおかげで、クラブの収入は莫大に増加し、その上選手市場も広がり、クラブ収入の内選手の給料が占める割合は全体の半分くらいにまで下がっていった。

でも、選手の市場が広がった事と収入が増えた事、そしてUtilityを最大限に求める風潮の中では選手の給料は一向に増えるばかりで、現在のように選手の給料は異常な額にまで達してきている。例えば、チェルシーという一つのクラブの、選手を含めた人件費は、Jリーグ全体の人件費の25倍くらい(2003年)。凄まじい額。。。

特にそのような風潮の追い風になっているのが、成績が良いチーム程多くの収入を得る事が出来る、ピッチ上の成功次第の収入分配システム。その中では、時に経営が破綻してしまうクラブも出たり、強いチームは強く、弱いチームはいつまで経っても弱いまま。チーム間の力の差はどんどん広がっている。

アメリカとはまた違う理由だけど、これまた面白い、健全なリーグと言えるのでしょうか。

チームには利益と勝利をそれぞれ目的にしていると言われてきたけども、現在では実際のところその両方を目的にしているところが多い。その象徴が、ヨーロッパクラブの株式上場。上場するという事は利益を出さなければいけない。そして株は試合結果にも大きく影響するので、ピッチ上で結果も出さなければいけない。

必ずしも健全には見えないアメリカやイングランドのプロスポーツリーグだけど、成功しているかしていないかと聞かれれば、収入の面から見ても「している」と言う方が正しいと思う。

では健全なプロスポーツリーグとは、一体なんなのでしょう。健全なリーグ=成功ではないのか。はたまた、健全と成功は同時には起こらないのか。はてはて。

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「Yamatogokoro.com」は、イングランドのサッカーセミプロリーグ(通称ノンリーグ)でプレーしながら、ロンドン大学バークベック校修士課程にてスポーツマネジメント&サッカービジネスを学ぶ著者による「イングランドサッカー留学日記」です。スポーツ、またはサッカーをピッチ上(選手として)とピッチ外(学問、ビジネスとして)、そして一ファン(消費者として)からの視点で語っています。続きを読む・・・。

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これは2006年02月28日 19:14に投稿された日記です。

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